2013 韓国国際ポスター展 2 [デザイン]

2013年12月6日から、ソウルデザインセンターで、
韓国、中国、日本、台湾、ポーランドのポスターデザイナー300名による招待部門と、
韓国国内からの公募部門「世宗賞」のコンペティション作品で構成される
「2013 韓国国際ポスター展」が開催された。

私は、招待部門での出品に加え、
日本から2名が指名された「世宗賞」の審査と
初日に開催されるシンポジウムのパネラーとして、4日にソウルに向った。
「世宗賞」はハングルを創ったことで知られる世宗大王を讃えて新設され、
来年からは「セジョン国際ポスタービエンナーレ」に発展させる予定と聞いている。

今回のシンポジウムのテーマは
「セジョン国際ポスタービエンナーレを世界的に定着するために」であった。
そして、開催間近になって、昨年開催された
「第十回世界ポスタートリエンナーレトヤマ2012」について
レクチャーしてほしいとの、連絡が届いた。

このトリエンナーレは、日本で唯一の国際公募展で、
昭和60年の創設以来、第10回展を迎える今回は、
世界53の国と地域より4622点ものポスターが寄せられ、
入選・受賞作品に審査員による招待作品を加えた約420点のポスターが紹介された。

しかし、私はこれまでポスター中心のコンペティションには興味を持てずにいた。
昨年は、トリエンナーレ会期中に、
日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)の総会が富山市で開催された。
私も役員の一人として出席、トリエンナーレは、総会に組み込まれていたが、結局、見ていない。

招致時には一言の説明もなく、当然のように、説明できると考える、
無謀ともいえる主催者の楽観ぶりには驚かされることしきりで、
当初、困惑するばかりであった。

しかし、いまさら辞退もできず、
しかたなく、まずは審査講評を分析することから始めた。
受賞作品の審査員は4名。
それぞれ、招待の礼と受賞者への賛美を除いた、主要な発言は以下のようであった。

永井一正(日本) 
○媒体としてのポスターの斜陽。
○ポスターは経済性より社会性、文化性に重点が置かれるようになった。

松永真(日本) 
○ポスターについての内容や状況の説明の必要性。
○ポスターが死に瀕している。
○ポスターが物や表現の代理人という立場から、より自主的な表現をもったものへと発展し、第六回からは自主制作部門が開設された。
○ポスターはデザイナーの自画像。個々の発言の重要性が増している。

アラン・ル・ケルネ(フランス) 
○言語、文化の違いを形だけで乗り越えることができるのか。

カリ・ピッポ(フィンランド) 
○視覚的な美しさと、何を伝えたいかの情報がもっと必要。
○視覚コミュニケーションは多くを言葉に頼る。

すこし補足すれば、

宣伝/広報=ポスター、という考え方は日本では、1970年代で終わり、
特定の場所にだけ貼られるポスターはその一部に過ぎず、選択は多様化している。
デザイナーのポスターへの絶ちがたい憧れのような意識が存在し、
自己表現の場として、他の媒体に比較し優越性があると多くのデザイナーは考えている。
このことに触れたのは、日本の審査員のみで、ヨーロッパの審査員は触れていない。
これは日本の特殊性なのか、
それとも、あえてそのことに、触れなかったのか、文面だけでは判断できない。

最終的には、次の3点の課題に集約される。
1. ポスターが使命を終えたいま、ポスターの可能性とは何か。
2. ビジュアル審査を越え、言語、文化の違いを越えた審査はいかにしたら可能か。
3. 視覚コミュニケーションとしてとしての言語の重要性をいかにしたら再確認できるのか。

と、このような内容を
ポスターという言葉を韓国、中国、英国、日本の各国の文字で表現したボードを使用して、
まず説明した。

韓国ポスター.jpg

具体的な提案として、

全ての応募者がハングルのタイプフェイスを制作し、
それを使用したポスターを出品することを提案した。
それが、可能であることを示すために、
私もこのシンポジウムのために、ハングルに初めて挑戦。
「セジョン国際ポスタービエンナーレ」をタイプフェイスにすることを前提にデザインした。

ハングル.jpg

そして、その文字を使用して、制作したボードが

韓国タイプフェイス.jpg

右より、ハングルで「タイプ」「フェイス」「世宗」
下に横書きで「ポスター」である。
「ス」の文字がダブっている。

このような課題に挑戦すれば、
ハングルを創成した世宗大王の顕彰もでき、
若い文字「ハングル」のタイプフェイスも完成されていき、
韓国のグラフィックデザインにこのビエンナーレが大きく貢献できるだろう。
また、欧米や日本のタイプフェイスデザインの理論や技術もまた、
この課題を通して、ハングルに貢献できることを、
初めて挑んだハングルで私は確信した。

その後、
デザイン誌、日本の「アイデア」と韓国の「365」の編集長から、
私たちと同様に、
現状のポスタービエンナーレに対して興味を持てず
取材も行っていないとの
発言もあつて、シンポジウムは終了した。


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